文学を歩く


『雁』森鷗外

不忍池コース


 ここで、以前にした仕事を公開します。

 事例として森鷗外に関連する散歩道をご案内いたします。作品は『雁』です。「かり」じゃなくて「がん」と読むからね、これ。

 

 ①無縁坂 → ②不忍池の北側 → ③『松源』や『雁鍋』があった広小路 → ④狭い賑やかな仲町 → ⑤湯島天神 → ⑥臭橘寺(からたち寺=麟祥院)の角を曲がって帰る → ⑦下宿

 もしくは、

 ⑤仲町を右へ折れて → ⑥無縁坂 → ⑦下宿

 

 以上は、『雁』の主人公がよく歩く散歩道のひとつです。作中に登場する店、たとえば仲町の南側『たしがらや』や『松源』はすでに存在しません。ですが、『蓮玉庵』(蕎麦店)は、明治の頃とは場所を変えて、今も仲町通りに健在です。

 

 主人公が帰る下宿は、東京大学の今は鉄門となっている周辺にあったと考えられます。また、このコースは、実際に森鷗外が好んで歩た道と言われています。古本屋さんも激減しており、当時とは滄桑の変ですが、喜ばしいことに上野にある鷗外さんの旧居は保存されることになりました。

 

 作品には登場しませんが、湯島天神の東側にある「すき焼 江知勝』は明治4年創業の老舗として有名です。鷗外さんが通った記録は見当たりませんが、夏目漱石は贔屓にしていたようです。ウォーキングの終盤で、少し贅沢をして、文明開化当時の「牛鍋」を堪能してみてはいかがですか。食べ終わったら、腹ごなしに旧岩崎邸庭園へ参りましょう。ゴージャスな散歩道になること請け合いです。

 ここで豆知識です。

 書籍を出版すると、出版社から著者に対して「印税」が支払われます。この「印税」を日本で初めて導入した作家は、いったい誰だったでしょうか?

 

 そうです、答えは森鷗外なんです。

 

 それまで著者に対する出版社からの報酬は、原稿料(原稿用紙1枚に対する代金)で支払われていました。その仕組みを、森鷗外は著作の売上高(印刷部数)に応じた報酬とする方式(つまり印税方式)に変えて契約しました。その割合は、なんと25%。今では考えられないほど高い歩合です。いや、有名作家ならあるのかな……?

 それはともかく、以後、この印税方式が一般化して現在まで続いているわけです。さて、100年続いたこの印税方式も、ネット時代になって変化を迫られているはずです。それは、まさに鷗外さんの散歩道が100年前とはまるで違った風景となったように……。ネット時代でも、どうか書き手が食べていける方式になってくれるように願うばかりです。。。