ボクたちのはじまり
──『文学旅行』誕生秘話──
それは、出版社に勤めるヒコーキが、ホテル・旅館コンサルタントの友人・イチゲと、5年ぶりに一献かたむけていたときだった。飯田橋の、肴の旨い居酒屋でのことである。
「オレ、今、こんなこと考えてるんだ
そのとき、ヒコーキは、密かに温めていた“小さなアイデア”を話した。
「面白いね、ソレ」
イチゲは、そのアイデアを受け入れた。
すべては、ここから始まった。
それから二人は、毎日のように打ち合わせをするようになった。マクドナルドで100円コーヒーを頼むと、高校生たちの投げ出す足をかき分けて席を確保し、何時間もアイデアを出し合うのである。
これまでの地域振興やまち興しに欠けていた視点は何だろうか。自分たちの持つ技術や知識、人脈を活かすには、どうすればよいか。組織のつくり方は、どのような方法が最適か──。
打ち合わせのたびに、小さかったアイデアはどんどん変化し、思いもかけない方向へふくらみ、大きくなっていった。
いったいどれだけの100円硬貨がマクドナルドに注ぎ込まれただろう。やがて1つキーワードが飛び出した。
「旅行は、どうだ?」
空気がぐわっと動いた。
「……それなら広がりが持てる!」
『文学旅行』は、こうして誕生したのだった──