ボクたちが目指すもの

──『文学旅行』活動理念──

 ボクたちは、文学を軸にして、地域活性化・まち興しをしたいと考えています。文学作品にゆかりのある土地や施設は、その地域にとって限りない資産です。今は埋もれている、そうした資産を掘り起こすことで、その地域・施設にもっと人々が集まるようになってほしいのです。

 

 今、文学の力が弱くなっています。

 インターネットやスマートフォンが普及して、紙を媒体とした旧来の書籍や雑誌はメディアとして衰退の一途をたどっています。日本の書籍販売部数は、1996年に26563億円を売り上げたのをピークに長期低落を続け、2009年にはついに2兆円の大台を割り込み、現在に至っています。

 

 文学に人を魅了する力を取り戻してもらいたい、それには文学がもっと市民社会の中に入り込んでいかなくてはいけないのではないか、普通の市民生活の中で文学に触れる機会をもっと増やさなければならないのではないか、そんな感覚がボクたちの中にありました。

 

 旅行というキーワードが大切だったのは、文学作品や作家ゆかりの地域・施設に多くの人が旅行してくれるようになってほしいからでした。

 

 ボクたちは文学を体験してみたいのです。

 

 ボクたちのコンテンツの一つに、作家の好んだ散歩道を体験する企画があります。例えば、明治のインテリ代表、森鷗外の散歩道が上野にあるのですが、今その散歩道を訪ねると、当時と違って道は舗装され、鉄筋コンクリート造りのマンションが建ち並ぶ殺風景な道でしかありません。散歩をするのに、これほど無味な風景もないでしょう。

 ところが、今は殺風景な道も、明治の頃はまったく違っていました。夕暮れには七輪で魚を焼く匂いが充満し、路地で遊ぶ子供たちの声の響く、生活臭の漂う長屋が連なる場所で、その名を上野花園町と言いました。江戸時代に花畑があったのが由来で、路傍に咲く野草もきっと可憐だったことでしょう。散歩道の先には、小間物屋や商店の並ぶ場所もありましたし、鍋が有名な料理屋もありました。そうした道を、作家は頭を休める散歩道にしていたのです。

 今は殺風景な道でも、そんなことを想像しながら歩くと、何だかワクワクしてきませんか?

 もう一つ。森鷗外は、食べ物の好みが変わっていて、あんこ茶漬けが大好物でした。甘い物とごはんの組み合わせに目がなかったのです。あんこ茶漬けなどという気色悪い食べ物が舌に触れたとき、ボクたちはいったい何を感じるでしょうか……。

 

 作品の舞台やゆかりの地を訪れてみるだけでなく、人間としての作家を知り、その人柄を想像することで作品を深く理解し、時代と人間存在の意味を考える、そんな旅の仕方を楽しめるようになれば、とても素敵なことだと思いませんか?

 

 そうです。

『文学旅行』は、想像力の旅行でもあるのです。

 

 ボクたちは、『文学旅行』を通じて一般市民に、文学を「読む」「歩く」だけでなく、「味わう」「触れる」「見る」「嗅ぐ」「聞く」機会を提供し、市民社会が文化的で情操豊かな生活で満たされるよう、活動してゆくものです。

 

 

特定非営利活動法人 文学旅行